ソムリエ情野のCoffee Talk(連載4)
このコラムでは、当社が経営するフレンチレストラン「アピシウス」のシェフソムリエ 情野が、一般社団法人日本ソムリエ協会 機関誌「Sommelier」に掲載したコラムを抜粋してご案内します。
(社)機関誌「Sommelier」バックナンバー
https://www.sommelier.jp/organpaper/index.html
アロマとブーケで表現する、コーヒーのテイスティング現場(後半)
空気にふれることにより、ワインは美味しくコーヒーはまずくなる?
このように、ワインのほとんどはポジティブな部分が多いように思えますが、コーヒーはあまり空気にふれすぎると、味わいや香りが落ちてくることが多いのです。
コーヒーは濃くて「チョットやそっと」のことでは味わいが落ちなさそうに見えますが、「気の弱い小麦色に焼けた筋肉質のマッチョな男性」同様、デリケートで実は変化しやすい成分がたくさん含まれています。
時間が経ったコーヒーは酸味と苦味が際立っています。「酸っぱ苦い」味わいのものになってしまいます。これはコーヒーの成分に含まれるキナ酸に由来します。このキナ酸は生豆ではクロロゲン酸類に隠れ(結合)ていますが、ローストすることによってキナ酸が発生します。生豆の状態ではキナ酸はあまり酸味を呈しませんが、ドリップ後のコーヒー自身の温度と時間経過(酸素を含む)によってキナ酸が働きだして酸味を際立たせてしまいます。従って時間が経てば経つほど空気を含んで酸化しつつ酸味が際立ってしまいます。
ワインは程よい温度で香りや味わいがまろやかになり、様々な表情(香り)や味わいを楽しむことができ、「変わりゆく様を楽しむ」ことができます。
一方コーヒーは淹れたてから変化をし始めて味わいが落ちていきます。「落としたてのコーヒーはゆったりとした気持ちを持ちつつも、早めに飲むべし」。コーヒーを飲む鉄則と言えます。
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連載4